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数学
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Last updated Mar. 12, 2008
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comp -MYPEDIA Math- テイラー展開 Taylor expansion 1 概要 テイラー展開とは ex, sin x など無限回微分可能な関数を xn の無限和の形に直す操 作のこと。注目する点について何回微分しても微分係数が元の関数と同じになるよ うに作っており、注目する点のみの情報 (注目する点における n 回微分係数のみ) を 使って関数全体を表現している。これは近似などにも使われる。 特に原点についてのテイラー展開のことをマクローリン展開と呼ぶ。 テイラー展開の定義式の右辺のことをテイラー級数といい、テイラー級数が注目 する点の周りで元の関数に完全に一致することをテイラー展開可能と呼ぶ。 テイラー展開可能であるかどうかの判定ポイントは、無限回微分可能であるかど うかと後述の余剰項 Rn (x) が 0 に収束するかどうかである。余剰項が 0 に収束する ような x の範囲のことを収束域と呼び、これはその範囲においてはテイラー級数が 元の関数に一致することを意味している。 関数がある領域の各点でテイラー展開が可能であるとき、その関数はその領域に おいて解析的である、または解析関数であるという。 テイラー展開を行うと、様々な関数が扱いやすいべき級数に変換できるため式変 形の際に重宝する。特に、極限の計算などに威力を発揮する。ちなみに、等比数列 の総和の公式はテイラー展開の逆を計算していることに他ならない。 2 定義 テイラー展開の定義は以下の通り。 テイラー展開の定義 f(x) が点 a の近くで何回でも微分可能で、a を内部に含む区間 I で余 剰項 Rn (x) = f(n)(a+θ(x−a)) n! (x − a)n, (0 < θ < 1) が limn→∞ Rn (x) = 0 を満たすとき、f(x) は区間 I で次のように展開できる。 f(x) = f(a) + f (a) 1! (x − a) + f (a) 2! (x − a)2 + · · · これを a の周りのテイラー展開という。また、右辺をテイラー級数と いい、区間 I を収束域と呼ぶ。 ここで a = 0 とするとマクローリン展開の定義ができる。 1 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- マクローリン展開の定義 f(x) が点 0 の近くで何回でも微分可能で、0 を内部に含む区間 I で余 剰項 Rn (x) = f(n)(θx) n! xn, (0 < θ < 1) が limn→∞ Rn (x) = 0 を満たすと き、f(x) は区間 I で次のように展開できる。 f(x) = f(0) + f (0) 1! x + f (0) 2! x2 + · · · これを a の周りのマクローリン展開という。また、右辺をマクローリ ン級数といい、区間 I を収束域と呼ぶ。 3 n 次近似と余剰項 余剰項とはテイラーの定理から導かれる近似の誤差分のようなものである。話を 単純に進めるために今後はマクローリン展開について扱うが、テイラー展開につい ても同じである。 今、f(x) という関数を 0 の近辺で近似しようと考えたとき、もっとも単純な近似 方法は f(x) f(0) とすることである。これは、x = 0 の値だけは正確に合わせようという最も簡単な 近似である。 さらにこれを拡張して、もう少し正確に、x = 0 の傾き (1 回微分して 0 を代入し た値) も等しくなるような関数で近似しようとすると f(x) f(0) + f (0)x となる。確かに、微分すると次数が 1 つ下がり、f (0) だけが残ることが確認できる。 さらに x = 0 における 2 回微分の値も一致するように近似を考えると、 f(x) f(0) + f (0)x + 1 2! f (0)x2 となる。x2 を微分しているので、帳尻を合わせるために 1 2! を付けている。これを繰 り返すことを考える。 例として f(x) = ex のときのグラフを図 1 に示す。 一般に f(x) を n − 1 次多項式で近似した形を考え、その誤差 (f(x) と近似式の差) 2 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- 0 1 2 3 4 5 6 7 8 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 f(x) f(0) f(0)+f(0)x f(0)+f(0)x+1/2f(0)x^2 図 1: y = ex と 0 次近似、1 次近似および 2 次近似 を Rn (x) とすると f(x) = n−1 ∑ k=0 f(k) k! + Rn (x) と表せる。 テイラーの定理を使うと、この Rn (x) が Rn (x) = f(n)(θx) n! xn, (0 < θ < 1) を満たすような θ が存在することがわかる。 同じことをマクローリン近似ではなく、テイラー近似について考えると、 Rn (x) = f(n)(a + θ(x − a)) n! (x − a)n, (0 < θ < 1) となる。 これらの誤差が n → ∞ としたときに 0 に収束するならば、近似が元の関数と完 全に一致するであろうというのがテイラー展開の考え方である。 4 展開可能の判定と収束域 テイラー展開可能かどうかは次の 2 条件を満たしているかどうかで判断する。 3 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- テイラー展開可能かどうかの判定条件 1. f(x) は x = a で何回でも微分可能である 2. 余剰項が 0 に収束する lim n→∞ f(n)(a + θ(x − a)) n! (x − a)n = 0, (0 < θ < 1) 同じくマクローリン展開が可能であるかどうかは次の 2 条件を満たしているかど うかで判断する。 マクローリン展開可能かどうかの判定条件 1. f(x) は x = 0 で何回でも微分可能である 2. 余剰項が 0 に収束する lim n→∞ f(n)(θx) n! xn = 0, (0 < θ < 1) 実際に Rn (x) → 0 となるかどうかとその時の x 範囲の計算をするには絶対値を付 けて行う。Rn (x) → 0 となるような x の範囲このことを収束域といい、収束域内に おいてはテイラー展開が元の関数と一致することを示している。当然であるが、xn は連続関数なので、収束域は元の関数の不連続点をまたぐことはない。 以下に、ex のマクローリン展開の収束域の計算を挙げておく。 Rn (x) = eθx n! xn だから 0 ≤ |Rn (x)| = eθx n! xn ≤ e|x| n! |xn| → 0, (n → ∞) よって収束域は −∞ < x < ∞ 5 種々の関数のマクローリン展開 表 1 に代表的な関数のマクローリン展開を示す。 4 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- 表 1: 代表的な関数のマクローリン展開と収束域 f(x) マクローリン級数 収束域 ex ∞ ∑ n=0 1 n! xn −∞ < x < ∞ log(1 + x) ∞ ∑ n=1 (−1)n+1 n xn −1 < x < 1 1 1 − x ∞ ∑ n=0 xn −1 < x < 1 (1 + x)α ∞ ∑ n=0 ( α n ) xn −1 < x < 1 sin x ∞ ∑ n=0 (−1)n (2n + 1)! x2n+1 −∞ < x < ∞ cos x ∞ ∑ n=0 (−1)n (2n)! x2n −∞ < x < ∞ arcsin x ∞ ∑ n=0 (2n)! 4n(n!)2(2n + 1) x2n+1 −1 < x < 1 arctan x ∞ ∑ n=0 (−1)n 2n + 1 x2n+1 −1 < x < 1 sinh x ∞ ∑ n=0 1 (2n + 1)! x2n+1 −∞ < x < ∞ cosh x ∞ ∑ n=0 1 (2n)! x2n −∞ < x < ∞ sinh−1 x ∞ ∑ n=0 (−1)n(2n)! 4n(n!)2(2n + 1) x2n+1 −1 < x < 1 tanh−1 x ∞ ∑ n=0 1 2n + 1 x2n+1 −1 < x < 1 5 Math 一覧へ . .