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数学
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Last updated Apr. 15, 2011
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comp -MYPEDIA Math- 非整数ブラウン運動 Fractional Brownian Motion 1 概要 本項では、非整数ブラウン運動 (FBM; Fractional Brownian Motion) と呼ばれる 連続確率過程の性質をまとめる. 2 定義 FBM は以下のように定義される. 定義 以下の3つの性質を満たすガウス過程B(t)を非整数ブラウン運動(FBM; Fractional Brownian Motion) と呼ぶ. 1. B(0) = 0 2. E[B(t)] = 0 3. Cov(B(t), B(t + τ)) = 1 2 ( t2H + (t + τ)2H − τ2H ) ここで,0 < H < 1 は Hurst parameter と呼ぶ H = 1 2 のとき,通常のブラウン運動に一致する. FBM は 0 からスタートし,徐々に分布が広がっていくため定常過程ではない. -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 図 1: FBM のサンプルパス 1 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- 3 定常増分性 FBM は定常過程ではないが,増分に関しては定常性を持つ. 定常増分性 FBM は増加分 B(t + τ) − B(t) が時刻 t によらない定常増分性を持つ. B(t + τ) − B(t) ∼ B(τ) これはどの時刻を時刻 0 としても,その時の値を 0 とすれば元の FBM と同じ FBM となることを意味している. 図 2: 定常増分性のイメージ 4 自己相似性 FBM は自己相似性と呼ばれる性質を持つ. 自己相似性 自己相似性とは,確率過程の一部を拡大 (スケール変換) したときに元 の確率過程と同じ確率的性質を持つ性質を指し,FBM は代表的な自己 相似過程である. B(at) ∼ aHB(t) FBM は自己相似性を持つため,一部を拡大してもやはりFBM になっている.横軸方 向に a 倍して aH 倍すると元の FBM と同じ FBM になる.これは Cov(B(at), B(a(t+ τ))) = a2HCov(B(t), B(t + τ)) となることから簡単に確認できる. 2 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- 通常,2 次元の図形の場合,横 a 倍に対して縦 a とすれば相似となる.このような 方法で次元を定義した場合,FBM では aH 倍となることから,FBM の次元が整数 ではないとなる.これは非整数ブラウン運動の名前の由来になっている. 図 3: 自己相似性のイメージ 5 長期依存性 FBM は長期依存性と呼ばれる性質を持つ確率過程である. 長期依存性 長期依存性とは,確率過程の現在の増分 Xi の影響が,無限に先の増分 に対しても影響を与える性質のことである. ∞ ∑ k=1 Cov(X1 , X1+k ) = ∞, Xi = B(i) − B(i − 1) FBM は 0.5 < H < 1 で長期依存性を持ち,0 < H < 0.5 では短期依存性を持つ. 長期依存性は FBM の性質というより,離散増分過程 Xi の特性と考えた方が理解 しやすい.FBM の離散増分過程 Xi のことを非整数ガウスノイズ (FGN; Fractional Gaussian Noise) などと呼ぶ. FGN の性質は FBM の性質から容易に導ける.Cov(Xi , Xi+k ) は計算すると以下 のとおり. Cov(Xi , Xi+k ) = Cov(B(i) − B(i − 1), B(i + k) − B(i + k − 1)) = 1 2 ( |k − 1|2H − 2|k|2H + |k + 1|2H ) 3 Math 一覧へ . . comp -MYPEDIA Math- 長期依存性を持つとは,現在の増分が近い区間に与える影響よりも,遠い区間に 与える影響の方が常に大きいことを意味する (赤の面積が青より圧倒的に大きい). ! !"!# !"!$ !"!% !"!& !"' !"'# !"'$ !"'% !"'& !"# ! #(! (!! )(! '!!! * +,-./012-./345678 図 4: 長期依存性のイメージ 自己相似性を持つ確率過程はその構造上,自己共分散関数がべき関数になる.よっ て,0.5 < H の自己相似過程は長期依存性を持つ (逆は一般に成り立たない) 6 長期依存性に関する補足 長期依存性の定義には様々なものがある. 定常で連続な確率過程における長期依存性の定義 定常で連続な確率過程では以下のような長期依存性の定義もある. Cov(X(t), X(t + τ)) = O(τ−α), (0 < α < 1) つまり,自己共分散関数の減衰がオーダーの意味で t−1 より遅いことを意味する. これは自己共分散関数の積分が発散するのと同じ意味があるため,離散における前 述の定義と対応する. ∫ ∞ 0 Cov(X(t), X(t + τ))dτ = ∞ 4 Math 一覧へ . .